ブリオン家の墓 (イタリア・サンヴィト アルティポリ)
ブリオン家の墓(Tomba Brion)は、プロダクトメーカーのブリオンヴェガ社(ラジオやテレビ等のAV機器メーカー)の創始者が依頼した墓地である。
ヴェネチアからの行程は次の通りだ。まずVenezia Santa Lucia駅から電車でおよそ一時間のCastelfranco Veneto駅へ。駅に着くと、20分ほど歩いてバス停へ。バス停の前にあるカフェでバス券を購入する。2、30分ほどバスに揺られ、バス停から10分ほど歩くとようやくたどり着く。
最寄りのバス停で降りると道中、教会やそれに隣接した学校を見ることができる。住宅地、畑が広がる風景に変わり、畑の中に、塀に囲まれたそれらしきものが見える。近づいていくと、塀は想像より低く感じた。塀にはスリットが空けられたところがあり、中をうかがえる。塀沿いに進むと、こじんまりした入り口が見える。門扉が開いていて、中へと誘導された。門扉の高さは1740mm、厚みは50~70mm。戸車までデザインされている。実はこちらの出入り口は通常閉まっているらしく、順路と全く逆行していたことは後で知った。一般墓地のエリアから入って行っていくのが正しく、見え方を演出し尽くされた順路がある。
敷地面積は2500㎡ほどあり、一般墓地からL字に25mずつオフセットした形だ。一般墓地の片隅にスカルパ自身のお墓がある。
大雑把に言うと、礼拝堂と庭園が、空間として体感できる。
礼拝堂はコンクリート造で、宗教建築的要素である光と陰を、スカルパ様式のディテールによって演出されている。平面構成はシンプルで、細部は複雑だ。
塀に囲われた庭園には、芝生や池、小川が、宇宙的なオブジェと共に配置されている。
自由に歩いてみる。視点が変わると風景が変わっていく。低めの塀が囲っているのもあり、日本のお寺のような雰囲気を感じた。塀により畑は見えず、遠くの教会が借景になる。
ここが最初に出会ったスカルパ建築。ディテールの量に圧倒された。友人から聞いた、「狂ったようなディテールだった」という言葉が腑に落ちる。大部分を構成するコンクリートと、タイルや、鉄、銅、木、石等の素材同士が馴染んでいた。スカルパの装飾には、美しさも感じるが、狂気のような、宇宙的な理解不能さも感じた。(写真・文:塩谷太一)