ドンラム村(ベトナム・ハノイ郊外)

ドンラム村は、ベトナム少数民族キン族の村です。ハノイ中心部より車で 1 時間ほどの距離に、少数民族が住んでいるなんて驚きです。よく雑誌などで見かけていたので興味を持ち、ハノイから足を伸ばしてみることにしました。
村は直径 300 mほどの広さで、周囲を塀と溜池で囲まれており、集落の入口には門が設けられ、大変閉鎖的な印象です。日本で言うと奈良の今井町のような寺内町のような感じに思いました。建都 1000 年のハノイ周辺には、長い歴史を刻んできた村が多く、その中でもドンラム村は、集会所、宗教施設、古い町並みなど、ベトナムの農村がもつすべての要素が昔のまま残っている希有な存在であり、2005 年に村全体が国家文化財に指定されました。
村には集会所を中心としてメインストリートが通っており、そこからたくさんの袋小路が枝分かれしており、住宅が密集しています。今井町は商業で栄えた町なので、通りに面して町家がびっしり建てられているのですが、対して、農村であるドンラム村は、各住戸の敷地外周には付属屋と高い塀が設けられ、閉鎖的な配置になっています。中の様子はほとんど窺えません。門扉も多くは閉じられていましたが、いくつかの修復された住宅を見学することができました。

ドンラム村の入口。村は溜池と塀で囲まれており、人々は門からのみ出入りできる。 ドンラム村の入口。村は溜池と塀で囲まれており、人々は門からのみ出入りできる。 村の中心にある集会所。大きな広場があり、脱穀したお米やトウモロコシが干されていた。 村の中心にある集会所。大きな広場があり、脱穀したお米やトウモロコシが干されていた。

ドンラム村の路地 1

ドンラム村の路地 2

ドンラム村の路地 3

村のメインストリートから枝分かれしている路地。住戸は通りに対して閉鎖的に作られているので、人の気配があまり感じられない、とても静かな雰囲気。道路に脱穀したあとの藁が干されていたりする。

敷地には、農作業を行うための広い中庭を中心に、主屋や離れ、水回り、家畜小屋、納戸等がこまごま配されていました。修復済みの民家では、葉っぱを編んだような外壁や草葺きの屋根の水回り棟が復元されているものもありましたが、木造、切妻瓦葺きの屋根、レンガまたは漆喰の外壁、レンガタイルの床が一般的のようです。いずれも、村またはこの付近で作られた素材から作られています。主屋のファサードは漆喰で装飾された美しいもので、梁にも化粧彫りが施されていたりなど、有力農家の暮らしぶりがわかるものも見られました。一間ほどの深さのある下屋部分が半屋外となっており、室内と外部を緩やかに繋ぐ緩衝地帯になっています。夏の激しい日差しを避けるためにとても効果があります。

ドンラム村の住宅 1 ドンラム村の住宅 2 住宅の中にはいると、中庭を中心に正面に主屋、周囲に付属屋がたくさん設けられている。

主屋前面の軒下空間 1 主屋前面の軒下空間 2 主屋前面の軒下空間。地震が少ないせいか、構造的にはあまり効率的な架構ではない。 復元された、草葺きの水回り 復元された、草葺きの水回り。

近年、村全体の建物の老朽化が著しく、JICAなどの協力で修復作業が進められています。ドンラム村では、建物の修復だけでなく、村民の経済的安定を図るべく生活向上の支援を行っているそうです。また、保存への意識を高めるために、工事にはできるだけ村の人の協力を促し、また、保存事業の意義や、景観を損なわない新築や改築の方法などを、村民に理解してもらうようにする方法を模索したりしているとのこと。しかしながら、援助があるとはいえ、保存・修復には自己資金が必要であり、洋風の新しいスタイルの住宅を新築した方がはるかに安上がりで、皆が足並みを揃えて保存活動を行っていくのは困難なようです。どこでも同じような問題が出てきているのですね。 伝統的な家屋は、快適ではないというわけではなく、水回りなどの設備が現代のスタイルに整っていれば、そのまま気持ちよく住み続けることは可能だと思うのです。国などの協力をもとに、住民の村の保存意識の向上と快適な生活の維持がバランス良く進んでいくことが、村の建物や雰囲気をうまく保存していく鍵になるのでしょうか。(写真・文:木名瀬)

 |  カテゴリー:フィールドワーク |  投稿者:Kinase Kayo