カステルヴェッキオ美術館
(イタリア・ヴェローナ)
1964年カルロ・スカルパ設計。 カステルが英語で言うキャッスル、つまり城を意味し、ヴェッキオが古いという意味なので、カステルヴェッキオ美術館は古城美術館を意味するようだ。
敷地は、お城らしく、掘(現在は水が無い)とヴェローナの町を大きく流れる河に囲まれている。その敷地の中に、ロの字の建物が中庭を囲む構成だ。交通量の多い道路から、堀を越える橋を渡り、門をくぐり、中庭に出る。すると正面に美術館のメイン建物が見える。中庭では水場や、アプローチの床等にスカルパの意匠を感じられる。またメイン建物の外観に挿入されている要素からも、それを感じることができる。
建物中央部から隅の方へ移設されたエントランスへ向かい、チケットを購入し、アーチの間へと向かう。
点在された彫刻があちこち向いている。立ち止まったり振りかえったりしながら進んでいくように計画されている。中庭側に設けられた窓からの光が彫刻を照らし、陰影を作り出す。
この美術館は階段が多く、そしてそれらの意匠が場面毎で違う。それらは彫刻的であり、次の展開へつなげる装置でもある。
また、展示物のための什器も、それらひとつひとつが彫刻的であり、工芸品のようであった。
展示空間は、アーチの間(ま)を含め、大きく分けると3つあり、元の空間の性質もあるであろうが、全く違う趣を持った空間である。それらを、騎士の彫刻がシンボリックなヴォイド空間が、違和感無くつなげるようになっている。
このヴォイド空間こそが、カステルヴェッキオ美術館の肝のように思う。展示空間を行き来するたび、この空間を通り、いろいろな角度から騎士の彫刻や空間を見ることができる。また、その構成は立体的で複雑である。
既存のものを活かし、新しい空間を作り上げた最高の例を体感できた。(写真・文 塩谷太一)
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美術館メインの建物。右の隅に出入り口がある。
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中庭を見下ろす。左側が美術館メインの建物。
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ヴォイド空間を見下ろす。動線が交差する場。
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ヴォイド空間を見上げる。
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2階ヴォイド空間を見る。
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2つめの展示空間。
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壁は当初のモザイク画。什器はデザインされている。
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3つめの展示空間。柔らかい光を取り入れている。
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天井のデザイン。